地唄 菊の露
歌詞
鳥の声 鐘の音さえ身に沁みて 思い出すほど涙が先へ 落ちて流るる妹背の川を
とわたる船の楫だに絶えて 櫂もなき世と恨みてすぐる
思わじな 逢うは別れと言えども愚痴に 庭の小菊のその名に愛でて
昼は眺めて暮らしもなろが 夜々毎に置く露の 露の命のつれなや憎くや
今はこの身に秋の風
解説
本調子端唄。
広橋勾当作曲。
地唄艶物の代表的な曲。
花崎流では名取りになるための試験曲。菊の露は、古来は目出度い長寿の印でしたが、この曲では、亡き人を偲ぶ花として菊を出し、そこに落ちる露に涙を連想させている。鳥の声、鐘の音、露が落ちる音など、自然界の音に心の寂しさが託される繊細さが大事な曲です。