ポーランド公演を前に ~ 杜季女に聞く ~ 第三回
☆今回のポーランド公演の演目についてお聞かせください。
╶─古典曲は「残月」と「夕顔」です。尺八だけの演奏は「虚空」があります。
また、ポーランド公演での新しい試みとしてショパンのマズルカとプレリュード、そしてポーランド民謡の一曲(恋する娘が母親と恋人の間で揺れ動く心情を歌ったもの)に振付をした創作舞をいたします。海外公演ではよくあることですが、曲はまだアレンジの最中であちらで最後の仕上げをすることになります。
他には前回申し上げたようにポーランドのHanaさんが「文月」「菜の葉」を舞ってくれますし、最後は「さくらさくら」を参加者みんなで舞います。
音楽は尺八と三弦の代わりにハープの演奏です。ショパンやポーランド民謡はバイオリンとピアノで、合唱も入ります。
☆どういう理由でこの選曲をなさったのでしょう。
╶─選曲にあたっては、外国の方にも理解して共感していただけるテーマのものを心がけています。「残月」は月のもとでの亡きひととの対話です。月の神秘性は万国共通ですし、月を眺めて亡きひとを想うという心情も古今東西同じだと思います。前回公演で舞った「珠取り」は母の子への愛情を舞うものですが、やはり海外では出来るだけ普遍的なわかりやすいテーマのものを選びたいと思います。
「夕顔」は『源氏物語』を題材とした舞ということで選びました。海外で最もよく知られている日本の古典が『源氏物語』です。地唄舞の公演に来てくださるのは半分以上日本愛好家の方々ですから、親しみのある源氏物語の「夕顔」であれば、一層喜んでいただけるのではないかと思いました。
また、ポーランドの音楽で舞う理由は、ポーランドの観客に地唄舞をみて自分の国の言葉で想像してほしいと願うからです。地唄舞は他の舞踊に比べても、想像の要素の大きい舞の世界です。地唄舞において言葉は勿論とても大切なものですが、今回は日本の古典を尺八とハープだけで舞ったり、純粋な音楽だけで舞うことで、是非自由に世界観を想像して楽しんでいただきたいと取り組んでみました。
ハープの伴奏で日本の古典曲を舞うことは今回初めての経験ですが、とても音がやわらかくなります。色々な音楽で地唄舞の身体表現を追究することはこれからも続けていくつもりです。
☆多彩なプログラムですから着物のご準備も大変ですね。
╶─╴プログラム前半では古典的な着物ですが、後半のポーランドの音楽での舞では、真っ白な着物にラメの入ったものと、少し金の入った帯を舞台衣裳として使います。どんな音楽にも溶けこむ白ということで選びました。
今回はワークショップも多いので、それ用に汗をかいたり汚れてもホテルで洗濯して乾かせる化繊の着物も持参します。絹より手入れがらくで清潔を保てることは大切です。あちらも日本のように暑いとききましたので絽も持ち込みます。少し軽くなります。
二年前のポーランド公演のときの写真がヨーロッパのファッション雑誌「ELLE」に掲載されているそうです。二か月ほど前のことで、カメラマンから写真の使用許可を求めてきたので知りました。まだその記事は見ていませんが、機会がありましたら見たいと思います。
☆現地ポーランドから公演やワークショップの写真をポーランドからお送りいただいてこちらにアップできれば、現地の熱気も伝わることでしょう。お元気なご帰国をお待ちしております。またポーランド公演の感想など伺うのを楽しみにしております。
文責 珠真女