仇な笑顔

歌詞

仇な笑顔についほれ込んで つま恋う雉のほろろにも 千ひろの海の雁金に 言伝てかえす燕の便り 嘘ならほんにかおとり見てと 羽がいの肌に抱きしめ そこからそこへとまりあい 嬉し首尾じゃないかいな

字句解釈

夫恋う雉子:古来、雉子の雌が雄を呼ぶときに地上にうづくまって両翼をふるわせて鳴く声を「雉子のほろろ」または「ホロを打つ」と称した。雉子は一夫多妻であるため、「夫恋う雉子」の哀れさが、江戸時代の人々に一層切なく聞こえたためであろう。(学者の説によれば、ホロを打つのは山鳥であって、雉子はケツ、ケーンと二声に鳴くという。)

千尋の海を雁に言伝頼む:早春、花の咲くのを待たずに千尋の海を渡って北に帰る雁に向かって、愛しい人へ文の便りを頼むと言伝する所。

燕の便り:雁と入れ違いに南から渡来する燕のように、愛しい人の文が届くようにと願う女心を唄ったもの。

鷽ならほんに貌鳥見てと:「うそ」は「鷽」という鳥の名にかけたもの。「顔鳥」はまたはよとも呼び、夜となく昼となく恋をしている深山の鳥で、『源氏物語』などによく出てくるが、何の鳥をさすのか不明。

羽掻:鳥に関係した言葉。

とまり山:鳥に関係した言葉。

引用文献

木村菊太郎著 『江戸小唄』 演劇出版社