端唄物 江戸土産(えどみやげ)

歌詞

[前弾]仮初めの夢も浮寝の仇枕 結ぶ契りは深見草 花に戯るる越後獅子 笛や太鼓の拍子よく 突く杖頼りに都を指して 上る法師の唐衣 着つつ馴れにし在原の 装も形も透額 月の黛 武蔵坊 七つ道具の七化けと 変われど同じ色の道 芝翫ぶ 在所ながらも 相模の蜑の笑顔も良しや 灘波津の浦々までもかけて見る この一軸の朱鐘馗さんは 国を守りの神かけて 栄ゆる春こそめでたけれ

解説

【作詞者】錺屋治郎兵衛事百鬼 替歌に中村秋香編詞と音楽取調詞の2種がある

【作曲者】津山検校+松島検校 伊勢屋三保加調(改作か)

【初 出】『新大成糸の節』(1814)

【調 弦】本調子→三下り江戸に出た三世中村歌右衛門が1811年の《遅桜手爾葉七字》で好評を得た2年後、帰坂のお土産狂言として中の芝居で芳沢槌松座で《慣ちょっと七化》の題で上演した。傾城・越後獅子・座頭・業平・橋弁慶・相模蜑・朱鐘馗の七変化を詠み込んでいる。冒頭の“仮初め”は仮初の傾城の意で“深見草”は牡丹の異名で獅子を導く。“上る法師”は座頭を、杜若の折れ句の歌で業平を出し、最後に弁慶、相模蜑、朱鐘馗を歌って七変化すべてを詠み込んでいる。“芝翫ぶ”は歌右衛門の号・芝翫をいう。

【引用】地歌筝曲研究

①演劇出版社に掲載された地唄舞に関する資料からの引用

②各演目の舞の心得(お家元様)

③扇、衣装、かつらetc