鐘が岬

歌詞

鐘に恨みは数々ござる 初夜の鐘を撞く時は 諸行無常と響くなり 後夜の鐘を撞く時は 是生滅法と響く

なり 晨朝(しんぜう)の響きには 生滅滅己(しょうめつめつい) 入相(いりあい)は 寂滅為楽(じ

ゃくめついらく)と響けども 聞いて驚く人もなし 我は五障(ごしょう)の雲晴れて 真如(しんにょ)

の月を眺め明かさん 言わず語らず我が心 乱れし髪の乱るるも つれなきはただ移り気な ああどうでも男

は悪性な 桜さくらと謳われて いかに袂に分け二つ 勤めさへただうかうかと どうでもおなごは悪性な

 東育ちは蓮葉なものぢゃえ 恋のわけ里数え数へりゃ 武士も道具を伏せ編み笠で 張りと意気地の吉原

 花の都は歌でやわらぐ敷島原に 勤めする身は 誰と伏見の墨染 煩悩菩提の撞木町より 浪花四筋に通

い木辻の 禿(かむろ)立ちから室(むろ)の早咲き それがほんの色ぢゃ 一二三四(ひいふうみいよ)

夜露雪の日 下関路を 共にこの身を馴染み重ねて 仲は丸山 ただ丸かれど 思い染めたが縁ぢゃへ

解説

和歌山県道成寺(どうじょうじ)に伝わる安珍と清姫の伝説に由来する曲です。その後の後日譚として作

られた能「道成寺」では、大蛇によって焼かれた鐘を僧侶達が鐘供養した。その供養の場に、美しい白拍

子(しらびょうし)が現れた。白拍子は舞を奉納すると言い、舞い始めたが、突然、鐘の中に飛び込んだ

。鐘が落ちた。僧侶達は祈祷の力で鐘を持ち上げた。すると中から大蛇が現れた。それは安珍清姫伝説の

大蛇であった。大蛇は炎を吐いて暴れたが、僧侶たちの祈りの力によって大蛇は追いやられた。という話

。   その能をもとにして 歌舞伎「京鹿子娘道成寺(きょうがのこむすめどうじょうじ)」が生まれ

ました。白拍子の美しい娘踊りが華やかに構成されています。そして、この歌舞伎をもとに、次にうまれ

たのが地歌「鐘が岬」です。歌舞伎「京鹿子娘道成寺」のなかで使われる曲達の中から何曲目かを抜き出

して、つなげて、地唄舞に合うように雰囲気を整えたものです。 江戸の歌舞伎の豪華絢爛さをかもし出

す曲達を、地唄舞という抑えた雰囲気の舞に合うよに作り直した曲です。