御所のお庭

御所のお庭

御所のお庭に 右近の橘 左近のササササふくふくふくふく
だらだらだらだら 右大臣 左大臣 サササ
緋の袴はいたる官女官女 たちたち
雪はちらちら 子供はよろこぶ 大人はかじける
犬はとびあがる 雪はなあ 集めて サササ
箒で掃くやら 屋根の雪や 棹でかく
下の東寺の羅生門には 茨木童子という鬼の住むげな
渡辺綱のかぶとを サササ ひっつかんで舞い上がる
太刀ひさ抜いて腕 斬る

文化四年年刊
(粋辨当)四篇に所収

雛祭りの人形のイメージ
雅な官女の舞から
渡辺綱の鬼退治へと
音頭調の曲調に
様々な舞振りが見られる

解説

二上り。上方端唄。文化四(一八O七)年刊『粋辨当』四編に所収されているが、「緋の袴はいたる官女たち」まで。東寺と金閣寺を歌った替え歌も掲載されている。弘化四(一八四七)年三月江戸河原崎座の常磐津「笑門俄七船福」(とてつる拳)にもとりいれられているといい、江戸でも流行していたことがうかがえる。 文久元 (一八六一)年刊 『吾妻しらべ』三編にも所収されているが、「 屋根の雪や悼でかく」までで、やはり後半が異なっている。芝居では、大掃除の場面の下座唄に使われているという。京都御所の紫哀殿南階下の西方に植えられた右近の橘と、東方に植えられた左近の桜についで、右大臣左大臣、緋袴の官女といった雛祭りの人形のイメージヘとうつり、雅な官女の舞となる。

最後は荒事風の渡辺綱の鬼退治である。音頭風の軽い曲調に様々な舞振りが見られるしゃれた舞である。

演劇出版社日本舞踊曲集成より引用