袖の露(そでのつゆ)

歌詞

白糸の絶えし契りを人問わん つらさに秋の夜ぞ長き あだに問い来る 月は恨めし 月は恨めし 明け方の枕に誘う松虫の 音も絶え絶えにいとどなお 荻吹く風の音信も 聞くやと待ちてわびしさの 涙の露の憂き思い 臥してまろ寝の袖にかわかん

解説

作曲:峰崎勾当 作詞:油屋茂作・市朝(油屋茂作・近松播磨の合作説もあり)

二上り端唄。

袖の露とは、衣の袖に置く露ということで、悲しみの涙で袖が濡れることのたとえであり、秋の季語でもある。冒頭の「白糸」は「絶えし」、「解けし」などの枕詞で、自分の心は恋しい相手の思いのままになることを、どのような色にでも染まる白い糸になぞらえたもので、「白糸の絶えし契りを…」と、絶え絶えの契りを嘆く言葉から、曲は始まる。秋の夜長、いたずらに差し込む月の光が情けないという、独り寝のさみしさ、切なさといった女心を描く。夜更けの月、松虫、荻といった様々な秋の風物を読み込み、つやっぽくも、和歌の手法を取り込んで上品に仕上げられている作品。

参考文献 

江口 博監修「日本舞踊全集」第三巻. 日本舞踊社.

岡田万里子編著「日本舞踊曲集成②京舞・上方舞」別冊「伝統芸能シリーズ」演劇出版社. 2005